1階は全戸5部屋。101号室はお母さんとお子さんが住んでいた。落ちてきた照明でお母さんが手を切ってしまったようだが、ひとまずは元気なよう。お子さんはよっぽど怖かったのか、お母さんの足に抱きつくようにしている。

102号室と103号室は、留守のよう。

104号室は、返事の声はしないが、ドアノブを回すとカギはかかっていなかった。

大家さん

大家さん

開けますよー!

玄関もキッチンも、そして中のリビングも、ぐちゃぐちゃになっていた。割れているものも多いため靴のまま部屋に入る。照明がなく薄暗い部屋の中、携帯のライトの光?がうっすらと漏れて見えている。その方に向かうと声が聞こえた。

学生さん

学生さん

助けてください!動けなくて…

窓際の方に、家具の山が出来ています。

学生さん

学生さん

ベットの脇に身を隠したら、タンスが倒れてきて、動けなくなっちゃって。

部屋はテレビやPCも落ちて壊れている。窓も割れていて、この部屋も大変なことになっていた。私はその様子に唖然としてしまった。

お隣さん

結さん

何処か痛みますか?

学生さん

学生さん

大丈夫みたいです。

お隣さん

結さん

それならちょっとずつ上のもの動かしますね。すいませんが、大家さんはさっきの男性を呼んできていただけますか?

大家さん

大家さん

わかったわ。すぐ呼んでくるわね。

結さんと一緒に上に倒れかかっている本棚をどかした。本棚は、本が下に落ちていたので比較的軽く動かすことが出来た。時計や花瓶などを飾っていたようで陶器の破片が落ちていた。携帯のライトと半分学生さんが見えてきた。あと少しタンスを動かせれば・・・。

お隣さん

結さん

手を切らないように気を付けて。

結さんは軍手を外して渡してくれた。外した軍手の下から、ゴム手袋が出てきた。本当にしっかり準備している。

気をつけながら、本や破片などをどかしていく。タンスが出てきたところで、大家さんがさっきの男性を連れて来てくれた。

2階の男性

2階の男性

一緒に動かしましょう

私は、結さんに借りていた軍手を男性に渡した。結さんと男性がタンスをどかそうとするが、独りでは動かせない重さだ。結さんが窓の向こうにある物干し竿を持ってきた。

ベットの隙間とタンスの間にポールを刺して、てこの原理でタンスを浮かすように動かす。

大家さんと一緒に男性を引っ張り出した。タンスは再度倒れないように、倒したままにした。

学生さん

学生さん

ありがとうございます。本当に助かりました。

ベットを背にテレビを見ていたら、突然地震が来て…。頭を守ろうと思ってベットの横に身を隠したら、タンスや本棚が倒れてきて。本当つぶされると思いました。運よく隙間に入れたみたいで、でも出られなくなっちゃって。携帯だけは持ってたので、なんとかライトつけて。

お隣さん

結さん

ナイス機転でしたね。怪我はありませんか?指とか、動かしてみて。

学生さんは、その場で飛び跳ねて体に痛いところがないか確認している。

学生さん

学生さん

痛っ!

学生さん

学生さん

倒れてきたタンスにかすってしまった右足が少し痛いです。たぶん、打撲だとは思うんですが。でも動かせるので。

大家さん

大家さん

大事に至らなくて良かったわ。

学生さん

学生さん

このまま助けがこないんじゃないかって怖かった…。助けてもらって本当にありがとうございます。

学生さんは自分の部屋がぐちゃぐちゃになっている様子を見て、唖然としていた。

学生さん

学生さん

僕、生きてるんですね、生きています…。こんなに怖い思いしたの初めてです。

話している間も余震が続いている。

大家さん

大家さん

ひとまず、1階の空き部屋で休みましょう。