私はマンションで一人暮らしをしている。今日は10 月27日、夕方の17時。
お気に入りのコーヒーをいれ、テーブルに前から読もうと思っていた本を置き、ソファでいざ自分の時間を楽しもうというその時。

私

えっ!?なに!?

外から「ゴン」とも「ドーン」とも言えない大きな衝撃音が聞こえた。
何?と思った途端、突き上げられるような衝撃が…。

いきなりの大きな揺れに、椅子ごと放り出されそうになり、驚き床に座りこむ。携帯の警報が後から鳴りだした。揺れは収まるどころかますます大きくなり、本棚が音をたてて倒れる。

私

地震だ…。とうとう来たんだ…!

テレビが吹っ飛んだ。テーブルのカップが飛ぶように落ち割れる。本や額、物が落ちる。本が飛んできて頭に当たる。ノートパソコンが飛んできそうになり、電源コードで止まり落ちる。

私

キャーッ!

吊り照明が天井にぶつかり割れて音がする。窓ガラスが音を立てて割れる。ガラスの破片が降る。
体が足元から20から30cm位動く感じで、テーブルまで思うように動けない。這うようにして、大きく動くテーブルの下になんとか潜り込んだ。

私

うっ、動けない…!

テーブルごと振り回され、必死に足にしがみつく。その時、電気が消えて真っ暗になり、恐怖が倍増した。

私

停電!?真っ暗でなにも見えない!

ものが動き、ぶつかる音、落ちる音、割れる音。自分の叫び声と、壁から聞こえるギシギシという音。

私

(助けて、お母さん…!死んじゃう…!)

どの位経ったのかやっと揺れが収まり、私は恐々と顔を上げた。

私

止まった…の…?

割れて落ちた窓から、半分落ちたカーテンごしに風が入ってくる。そこから外光が入ってきて、なんとか部屋の状況が見えた。恐怖でブルブルと震えが止まらない。部屋の中が、「荒れ狂った何か」にぶっ壊されたようにぐちゃぐちゃになっている。

寝室のベットの上にタンスが倒れこんでいた。もし寝ていたらと思うと怖かった。本棚は倒れ、冷蔵庫も大きく動いていて、キッチンへの入り口をふさいでいる。すべての家具や物が動いている。

私

私、生きてる…。

あまりの惨状に、私は生きている幸運に感謝しながら、立ちすくんでいた。

CHAPTER#01「発災、自分を守れ。」

地震が起きたその時は、何が起こったのかさえ把握することができません。そのまま何もできないまま大きく揺さぶられます。
ドドン、ズドン、ドドドーッ、グラグラ。聞いたことのない地鳴り、下から突き上げるような衝撃と今までの自分が考えていた「地震」のイメージをはるかにかけ離れた大きさで揺さぶられます。体験した多くの人は地震ではない何か、飛行機が落ちた、戦争が始まった、富士山大噴火したなど人知していないなにか大きなことが起きたと感じたと言います。
立っていられず、そのまま座り込み、怖くて叫び続けます。その瞬間に何かをすることは大変難しいのです。そのことを知ったうえで、だから何もできないことを前提とした「安心づくり」が大切なのです。

  • しゃがむ
  • つかまる
  • 動けない
  • 固まる
  • 立ち尽くす